書評 住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち
本書の著者は実際にヨーロッパ各国で生活経験のあるドイツ在住で拓殖大学教授である川口マーン恵美氏である。本書では著者自身が憧れていたヨーロッパに長年住んでみて実感した、ヨーロッパと日本の比較が記されている。様々な観点から考えてヨーロッパよりも、日本の方が住みやすいという事を結論づけている。理由として主に2つ挙げられている。
日本の方が住みやすい理由①
電車ではみんなが居眠りする安全さ
1つめは通勤ラッシュの混雑の中でも居眠りができるほどの安全性だ。日本ではス
リが極端に少ないため他人を警戒するなんて事は少ない。しかしヨーロッパではスリや
強盗のリスクは頻繁につきまとってくる。同様に犯罪率も少なく日本はヨーロッパと比
べてはるかに安心して生活ができる
日本の方が住みやすい理由②
住みやすい街づくり
2つめは生活の不便さを感じにくいほどの住みやすさがある。日本ではどんな田舎に
行っても24時間空いているコンビニがあり、時間に狂いのない交通機関がある。東京で
はハイテクなビルが立ち並び、空調の聞いた施設のなかで快適に過ごすことができる。
しかしヨーロッパでは歴史を貴重とする分、整備の行き届いいない設備や建物が多い。
ヨーロッパの歴史的な建物は不便さも兼ね備えているのだ。
日本の方が住みやすい理由③
豊かな自然
3つ目は日本の豊かな自然である。ヨーロッパにはアルプスをはじめとした雄大な自
然がある。しかし日本にも同じように、日本百名山と呼ばれるような豊かな山が広が
り、透き通るような川があり、そして海に囲まれている。日本もヨーロッパの雄大な自
然に引けを取らないほどの自然がある。
このような理由から著者はヨーロッパよりも日本の方が住みやすいと述べている。
感想
まず書籍の感想としては、タイトルと内容があまり一致しておらず読みにくさを感じ
た。9勝1敗で日本の勝ちと書いていながら、日本の方が良いという理由があまりにも少
ないと思った。結果として日本が良い理由が上記に挙げたような、安全さや自然などあ
りきたりな理由でまとめられている。ヨーロッパについて知るという目的の本ならば良
いのだが、日本と比較するという趣旨の本としてはあまり目新しくはないと感じた。
しかしながらヨーロッパに長年住んでいた著者が、それでもやはり日本の方が住みや
すいと実感しているということに関しては少し驚いた。私個人としてはヨーロッパのよ
うな雄大な自然や歴史的建造物で構成されている社会というものに憧れを抱いていいた
からだ。しかしその歴史を重んじるということは不便さと共存するということでもある
のだ。確かに日本のような便利な国で生きてきた自分にとってもヨーロッパは住みにく
のかもしれないと思った。