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書評 「ネットは社会を分断しない」

 

要約 300文字

 本書はネットは社会を分断しないという事実を10万人を対象にしたアンケートを元に証明している。今までの通俗ではネットの誕生により社会は分断されていると思われてきた。それ芸能人の不祥事を中傷する内容や、主張の違う人を攻撃するコメントがネットでは目立ち、対立を促進しているように見えるからだ。しかし著者はネット利用することにより人々は、分断されないと結論づけている。実際にアンケートをとってみて分かったことは、初めから極端な思想を持った人がネットで批判的なコメントをしているということが分かったからだ。本書ではネットが人々を分断するという悲観論を否定し、ネットの可能性を示唆している。

 

選択的接触が分断を起こすという通俗 

 ネットを利用することにより、人々は分断されてしまうということを世間では言われている。過激な発言が目立つネットを見ていると確かに極端な思想を人々が持ってしまったと思ってしまう。そしてこれは選択的接触という心理学を理由に説明されてきた。選択的接触とは、人が情報を選択する際に既に自分が持っている情報に一致する物を選択するという事を指す。例えば、日本についてポジティブな考えを持つ人は、日本の美しい自然を紹介する雑誌や、日本の住みやすさを証明するような本を好む。反対に日本を批判するような内容の情報は遠ざける。このように人は無意識のうちに自分の価値観を補完するような情報に接している。この選択的接触がネットを使うことにより加速してしまうと思われてきたのだ。情報を受動的に受け取る新聞やテレビと違い、情報を能動的に選択できるネットでは選択的接触が起こりやすいからだ。実際にネットの利用を行う人ほど分断的な発言を行うという検証結果がある。

 

分断的発言を行う人は若者ではない

 ネットの利用頻度が高い人ほど分断的になるのならば、若者ほど分断的な発言をしているということが予測される。しかし年齢別のアンケートをとった結果、分断的な発言を行なっているのは高齢者であるということが分かった。この結果は「ネットの利用頻度が高い人ほど分断的な発言をする」という検証結果と矛盾するように思う。ネットの利用頻度が高いのは若者だからだ 。答えは因果関係の間違いにある。つまりネットを利用する人ほど分断的な発言をするのではなく、元々極端だった人がネットを使うようになったということだ。

 

ネットを使うほど寛容的になる

 しかしネットを利用しても分極化しない(分極化とは分断的な発言を行う人を言う)ということは、ネットが選択的接触を加速させるという事実と矛盾する。結論から言うとネットは実は選択的接触を思っているほど加速させないと言うことだ。例えばツイッターフェイスブックを使っている人が政治的に寛容的になると著者は述べている。何故ならば、SNSを利用すると自分とは主張の異なる立場の発言を目にする確率が増えるからだ。実際にSNS利用者が目にする投稿の役4割から5割は立場の違う人の発言だと分かっている。従ってネットを利用すれば選択的接触が加速するのではなく、実は自分とは主張の違う人の発言を受け入れやすくなるのだ。

 

過激発言をする人は約0.2パーセント

 ネットを使うと人は分極化するどころか寛容的になる。それでは何故ネットでは頻繁に炎上騒ぎが起こるのだろうか。様々な要因があるが著者はその原因としてネットでの意見の現れ方に原因があると仮説している。ネットであるコメントが見られた頻度のことを閲覧数と言う。閲覧数は総書き込み数×閲覧頻度で求めることができる。問題はこの総書き込み数と閲覧頻度にネットの性質上偏りが起こってしまうのだ。まずネットで政治に関する書き込みを行う人は全体の約5パーセントである。そして更にその中の約0.2パーセントの人が全体の書き込み数の半分近くを書き込んでいる。つまりそもそもネットで書き込みを行う人は全体のごく僅かの人なのだ。

 一方ネットで閲覧されるコメントはこの僅かな人が書いたものだ。過激なコメントはまとめ記事やワイドショーでピックアップされるからだ。その結果僅か0.2パーセントの人が書いた書き込みをその他の大勢が見るため、ネットでは実際よりも大きな分断が起きていると見えるのだ。

 

感想

 過激なコメントを見ても必要以上に反応しないようにしようと思った。私もワイドショーやまとめサイトで炎上騒ぎを見るとついそれが世論だと錯覚してしまうことがある。しかし実際にコメントしている人は極々わずかの人なのである。その僅かな極端な人が書いたコメントを見て一喜一憂することが馬鹿らしいし、時間と体力の無駄だと思う。ネットを使えば反対派の人の意見にも接する機会が増え寛容的になれると本書では言う。しかししっかりと情報の質を見抜く力、メディアリテラシーを持たないと一部の人に踊らされてしまうと言う側面もあると言うことが分かった。冷静な視点をもちネットを使っていきたい。