自分のペースで

大好きな読書を中心に、日々の気づきを綴ります。 目標→100記事執筆

トルストイ「戦争と平和」自分の人生を生き切る決意

 

戦争と平和1 (光文社古典新訳文庫)

 

 あらすじ

 19世紀、ナポレオンのロシア進行を背景にロシア貴族社会における問題や、登場人物達の成長を描く作品。有名なワーテルローの戦いやナポレオンの失墜の始まりともされるボロジノの戦いなどを皮切りに、戦争の無益さや人間の精神の崇高さなどが語られる。自分の人生や、結婚問題、財政難などに悩みもがきながらも前に進む、登場人物達の成長は現代にも通ずるものがある。作家のサマセット・モームが世界文学の最高峰と称した本作は、現代に生きる私たち人類にも普遍的なメッセージを投げかけてくれる。

 

 感想

 学生時代から過去2回挫折した本作。光文社から新訳が出たということで再挑戦した。今回読み切る事ができた事に(新訳の読みやすさもあるが)、自分も読み切れるだけの体力がついたという事まず嬉しかった。戦争と平和には人生における悩みの全てが詰まっているという言葉を聞いた事があったが、まさしくその通りである。進路についてや、恋愛や、性格やお金など現代に生きる自分でも共感できるテーマがたくさんあった。その中で印象的だったことは精神の重要さである。

 トルストイは一貫して物質主義に疑問を投げ精神主義の重要さを説いていた。青年士官のアンドレイ侯爵が、出世やお金、戦争なんてこの大空の広さに比べるとどうでも良いことなんだ、と悟るシーンがある。出世ばかりを目指してきたアンドレイ侯爵が極限状態の中で、精神の広大さに勝るものはないと気が付くのだ。

 私はこの描写を見て素直に救われる思いがした。自分は今まで自己肯定感があまり高くなく、人と比較しては落ち込むという事を繰り返していた。あいつの方が良い企業にいるとか、あいつの方が成績が良いとか、そんな事を考えては自信をなくし停滞してしまうのだ。でもきっとそんなことはどうでも良いことなんだと思う。他人と比較した価値なんてものは死を前にすると、一切がどうでも良くなる。大事なことは自分がどう生きていきたいのか、誰かのために今日をどのように生きるのかということなんだという事を思った。

 その他にもトルストイのナポレオンを英雄扱いしない点にも驚いた。ナポレオンが自分の意志で戦争を起こしたのではなく、時代がナポレオンを動かしたのだという考察は自分にとって新しかった。人は自分の意志で動いているように思えて多分に環境に左右されているという事であろう。ヒトラーホロコーストを起こしたのではなく、時代と民衆が望んだのであり、ヒトラーはその代弁者だったと捉える事もできる。

 現代でもコロナを取り巻く環境の中で、特定の誰かのせいにする論調は度々耳にする。しかし特定の1人が悪いなんてことはありえない。いつだって自分達が望んだ結果なのであり、自分もまたその状況を生んだ責任者なのだ。

 トルストイなら自分の悩みになんて答えてくれるだろうか、現代のコロナ騒ぎをどのように捉えるだろうか。こんな事を考えながら読んでいた。トルストイなら、誰かのせいにするのではなく、自分の人生を生ききれ!と自分にアドバイスをくれるような気がする。