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大好きな読書を中心に、日々の気づきを綴ります。 目標→100記事執筆

 走れメロスから学ぶ人生論 〜自分の弱さにうんざりするあなたへ〜

 

 

走れメロス (新潮文庫)

走れメロス (新潮文庫)

 

 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。このフレーズを聞くと高校時代の現代文の授業を思い出すのではないでしょうか。走れメロスを初めて目にした、高校時代の私は、そのストレートで情熱的なメロスにあまり共感できませんでした。なぜならば、短刀1つで王宮に乗り込むメロスの無謀さにも、一瞬心の中で友達を疑ったということだけで殴りあったりする時代錯誤感にもついていけなかったからです。「メロス、流石にもーちょい準備していかんとそりゃ捕まるわ。。」と。しかしそんなメロスなのですが、成長してから読んでみると、単なる暑苦しい羊飼いではなく、自分と同じように弱さと向き合いながら生きる友人のように思えてきたのです。勇敢で活力溢れる反面、油断や慢心、堕落に負けそうになるメロス。今日はそんなメロスが自分の弱さに翻弄されながらも、勇気を出して戦う姿を紹介します。

 

 王の猜疑心にメロスとセリヌンティウスの真実が打ち勝つ物語

物語は、正義感の強いメロスが悪政を働く王に対して意見をしたことから捉えられてしまうという箇所から始まります。メロスにはどうしても村に帰らなければならない理由がありました。その理由とは唯一の家族である妹の結婚式に出席すること。王はセリヌンティウスというメロスの親友を人質にすることで、3日間の自由を約束します。メロスは妹の結構式に出席し、都への道を急ぎます。メロスはその道中、邪魔をしてくる暴徒だけでなく、自身の心の弱さと戦います

 メロスの弱さ①→親友の命がかかっているのにまさかの寝過ごし

 結婚式が終わり疲れてしまったメロスは、一眠りすることにします。明日の日没までには都に帰らなければならないが、まだ時間はある。そしてメロスは

「目が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。メロスは跳ね起き、南無三、寝過ごしたか」(P171)

なんと寝坊してしまうのです。少し寝るはずが、明け方まで寝てしまいました。

私も後5分と目覚ましをかけていたのに、気がついたら1時間立ってたなんてことはよくあります。あれほど勇敢なメロスでも、睡魔には勝てない。

睡魔はやはり強いのです。

 

メロスの弱さ②→時間はまだあるしゆっくり行こう

寝過ごした分を取り返すためにメロスは急ぎます。都に着けば自分は殺され、そして愛する妹にはもう会えない。後ろ髪を引かれる思いの中、自分を鼓舞して走るのです。そして次第に気持ちも落ち着きメロスはこのように考えます。

「ここまで来れば大丈夫。そんなに急ぐ必要もない。ゆっくりと歩こう、と持ち前の呑気さを取り戻し、好きな小歌をいい声で歌い出した」(P172)

親友が殺されるという状況での、この呑気さ。私は次第にメロスに親近感を覚えてしました。 

私も毎朝、ちょっと早く起きれば良いのに、早く準備することより10分の睡眠を選んでしまう日々。ダメだとはわかっているのだけど流されてしまうのです。

 

 

メロスの弱さ③→ここまで頑張ったのだからもういいだろう

 道中メロスは、橋が壊れていたため濁流を泳いで渡り、そして襲いくる暴徒を素手で倒します。しかし既に疲労困憊状態のメロスはもはや立ち上がることができません。

メロスに悪魔のささやきが聞こえます。

「もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の中に巣くった。私はこれほど努力したのだ。約束を破る心は微塵もなかった。神も照覧、私は誠意一杯に努めてきたのだ。動けなくなるまで走ってきたのだ。私は不信の徒ではない。」

(P175)

メロス最大の試練が訪れます。ここまで頑張ってきたのだからもう諦めてしまいたいという感情が襲ってきたのです。

人ならば、誰しも上手くいかない時、また先行きが見えない時はもう努力をやめてしまいたいと思うものです。人はどうしても楽な方向に導かれてしまいます。

 

走れメロス

油断、慢心、堕落と様々な困難に負けそうになりながらも、メロスは最終的に自分に打ち勝ちそして見事、約束時間に間に合います。そして、その友情の崇高さに猜疑心で凝り固まっていた王が心を開くというラストで終わります。

この物語を通して、結局のところメロスが1番苦戦したのはなんだったのか。それは決して、襲いくる暴徒でもなく、壊れた橋でもなかったと思います。それは油断や、堕落に代表される自分の弱さです。メロスは最終的にその自分の心に打ち勝てたからこそ、頑なな王の心にも希望を与えることができたのだと思います。走れメロスは大人になった今だからこそ様々な示唆を与えてれる一冊だと思います。何かに挑戦しようとしいるあなた、自分の心の弱さに振り回されてしまうあなた、ぜひ再び手にとってみてください。勇敢だけれど、私たちと同じように弱い心を持つ、そんなメロスがあなたを支えてくれます。